FUJITSU
Worldwide|サイトマップ
THE POSSIBILITIES ARE INFINITE
Japan
元のページへ戻る本件に関するお問い合わせ先 English
[ PRESS RELEASE ]
2002-0263
平成14年11月8日
株式会社富士通研究所
ブロードバンド・インターネットを支える富士通No.190

世界最高! 10ギガビットの光信号1000波を一括増幅

株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、1波あたり毎秒10ギガビットの信号光を、201.8ナノメートル(nm)の帯域幅に渡って1000波長一括して増幅できる世界最高性能の技術を開発し、120キロメートル(km)の伝送実験に成功いたしました。

この光増幅器を用いると、従来の光増幅器に比べ、中継器の簡素化、低雑音化、高出力化および低コスト化が図れるため、将来のマルチテラビット光波長多重通信ネットワークへの応用が期待できます。

本研究の成果は、デンマーク・コペンハーゲンにて開催されたECOC2002 (ヨーロッパ光通信会議:European Conference on Optical Communication) において、9月12日に発表いたしました。

[開発の背景]

大容量のデータを長距離伝送できる波長多重(WDM)技術は、1本の光ファイバに波長の異なる複数の光を重ねて伝送する技術であり、波長の数に比例して伝送データを大容量化できます。近い将来実現される光ネットワークにおいては、波長を選択できる光スイッチを用いた波長ルーティングおよび光クロスコネクト技術などの適用が検討されています。柔軟なネットワークを構築するためには、1000波の多重数が必要とされており、これらの波長多重信号光を一括増幅できる広帯域な光増幅器の実現が期待されています。

また、実用化されている1波あたりの最高伝送速度は毎秒10ギガビットであり、コンピュータ間のデータ転送、アクセス・メトロなどと呼ばれる比較的に短い伝送距離から数千kmという長い伝送距離を持つ国際通信まで幅広く用いられています。毎秒10ギガビットの信号光を高密度に多重すると、実用的な観点より少なくとも0.2nmの波長間隔が必要であり、1000波の多重数の場合には200nmの波長帯域幅が必要になります。

当社は、信号光波長とラマン増幅(*1)に利用する励起光波長を混合配置する独自構成のラマン増幅技術を、平成14年5月1日に発表しております。この技術をもとに、更なる改良技術を用いて、毎秒10ギガビットの1000波長一括増幅を可能とする200nmという広帯域な光増幅器技術を開発しました。

[開発した技術]

今回開発したのは、水酸基OH吸収損失(*2)および曲げ損失(*3)の小さい新規ファイバを用いたラマン増幅技術と、ラマン増幅用励起光源として単一モード発振レーザを用いる光信号の増幅技術です。

開発した技術の特長は次の通りです。

  1. 信号光波長とラマン増幅用励起光波長を混合配置する構成のラマン増幅器において、1360nmから1571nmまでの8波長の励起光源を使用しました。
  2. 伝送路として、OH吸収損失および曲げ損失の小さなファイバを新たに適用することにより、1382 nmの励起光波長における損失が1dB/km以下に低減されました。
  3. また、1571 nmの励起光源として、従来の多モード発振レーザに代えて、0.3nmと極めて狭い光スペクトル幅を持つ単一モード発振レーザを採用するとともに、信号光帯域内に配置した他の励起光に対してスペクトルを狭窄化する光フィルタを用いることにより、有効な信号光帯域を拡大することが可能となりました。

この技術を用いて、1波あたり毎秒10ギガビットの信号光を423波多重した120kmの伝送実験を行い、1450 nmから1661 nmまで、有効な帯域幅として201.8 nm (従来は136.6 nm)の超広帯域に渡る信号光増幅を実現できました(図1)。この帯域幅は、エルビウム添加光増幅器などの希土類添加ファイバ増幅器(*4)に比べ、5〜6倍の増幅帯域幅に相当します。

また、誤り訂正技術を併用することで、120km伝送後の全チャネルの光SN比および符号誤り率は図2のようになり、今回の技術を用いればエラーフリー伝送が実現できることを確認しました。

今後は、400nmの更なる波長帯域幅拡大を図るとともに、広帯域に低雑音化する技術も併用し、実システムへの適用を目指していく予定です。

図1 光スペクトラム
図1 光スペクトラム

図2 120km伝送後の光SN比および符号誤り率
図2 120km伝送後の光SN比および符号誤り率

[用語解説]

*1:ラマン増幅
1450 nm帯の励起光を用いて、光ファイバが持つ非線形効果であるラマン散乱効果を応用し、1550 nm帯の信号光を増幅するものです。無中継伝送システムなどに既に実用化されています。励起光源の光パワーおよび発振波長を調整することにより自由に利得波長特性を設計することができます。
*2:OH吸収損失
光ファイバ中の不純物である水酸イオン(OH-)による吸収損失のことです。950、1240、1380 nmの波長帯において現れます。
*3:曲げ損失
光ファイバの曲がりが原因で生ずる放射損失のことです。マクロベンド損失とも呼ばれます
*4:希土類添加ファイバ増幅器
希土類元素を添加した光ファイバを増幅媒体として用い、希土類イオンの誘導放出現象を利用する光増幅器のことです。上記のエルビウム添加ファイバ増幅器のほか、ツリウム元素を用いるツリウム添加ファイバ増幅器などがあります。

以 上

元のページへ戻る ページの先頭へ

関連リンク

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。


All Right Reserved, Copyright (C) FUJITSU