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[ PRESS RELEASE ] |
2002-0074
平成14年3月28日
株式会社富士通研究所 |
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超高速、超高密度電子デバイス実現へ向け、 新しい分子エレクトロニクス材料を開発
株式会社富士通研究所(社長 : 藤崎 道雄、本社 : 川崎市)は、将来の超高速、超高密度情報処理デバイスの要となる有機分子と遷移金属 (*1)を組み合わせた有機−無機ハイブリッド物質による分子エレクトロニクス材料の合成に成功しました。
今回開発した材料を用いると、分子スケールで三次元的に回路を集積化することが可能な三次元マトリクス回路を構築することができ、従来のシリコン半導体デバイスに比べ3桁速い動作速度を持つ高速スイッチングデバイスや、3桁大きい極めて高い集積度をもつメモリデバイスなどの実現に道を開くものと期待されます。
なお、本研究に関する成果は、3月26日に東京で行われた日本化学会第81春季年会にて発表いたしました。
【開発の背景】
現在、マイクロプロセッサやメモリなどの電子デバイスは、シリコン半導体の微細加工技術を用いて、目覚しい高速化、高集積化が進められています。しかし、このような微細加工技術の進歩によるデバイス製造技術は、あと10年程度で集積化の理論限界に達すると予測されています。さらにその先の高集積、高速デバイスを実現するためには、従来にない新たな原理と材料に基づく新規デバイスの開発が必要になるため、量子コンピュータの研究などが行われています。
一方、1980年代後半に、有機分子を用いた分子エレクトロニクスの概念が提案されました。分子エレクトロニクスとは、有機分子の特徴である電子の局在化 (*2)を利用し、0.5ナノメートル程度の大きさの有機分子1個に、情報の最小単位である1ビットを割り当てることによって、極めて高い集積度のデバイス実現をめざす技術分野です。しかし、有機分子1個1個に蓄積された情報へのアクセス手段や有機分子の安定性などに問題があり、実用化の妨げになっていました。
そこで当社は、有機分子と遷移金属を組み合わせた有機−無機ハイブリッド物質による分子エレクトロニクス材料に着目し、分子スケールのデバイス実現に向けた研究を進めてまいりました。
【開発した内容】
今回、有機分子の優れた自己構造制御特性と、遷移金属原子による高い電子機能(導電性、磁性、非線型光学機能など)を兼ね備えた全く新しいコンセプトの分子集合体である超分子マトリクス (図1)の概念を考案し、これを実現するための有機−無機ハイブリッド物質の分子設計を行った結果、従来は困難であった分子への信号アクセスが容易で、しかも分子の安定性が高い新規物質の合成に成功しました。
現在、開発した材料を用いて、スイッチングデバイスなどの原理素子を実現すべく、三次元回路集積化の検討を進めています。
今回開発した材料の特長は次の通りです。
- 有機分子の設計に基づき、2個の遷移金属原子を精密に分子内に固定できる構造を持つため、高品位で安定な結晶構造が得られます。
- 導電性ポリマーなどを用いて分子ワイヤを形成すれば、個々の分子に蓄積された情報に電気的にアクセスが可能となります。
- 電気化学的な手法により、三次元的に分子を集積できるため(図2)、超高密度のメモリデバイスや、超高速の光スイッチングデバイスへの応用が可能です。
- 【用語解説】
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- *1 : 遷移金属
- 鉄やコバルト、ニッケルなど特殊な電子軌道を持つ金属元素で、導電性の他に磁性や光学特性など特徴的で有用な物性を多く示します。
- *2 : 電子の局在化
- 有機材料には、炭素原子上に束縛された多数の電子が存在します。これを電子の局在化と呼び、有機物質特有の電子の性質です。
図1 | 図2 |
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超分子マトリクスの概念図 | 集積化有機−無機ハイブリッド物質 |
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以 上
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