|
[ PRESS RELEASE ] |
2002-0028
平成14年2月1日
株式会社富士通研究所 |
|
小さな文字でも見やすく表示 フラットパネルディスプレイ用高精細文字表示技術を開発
株式会社富士通研究所(社長 : 藤崎道雄、本社 : 川崎市)は、一般に常用される大きさ(5〜20ポイント)の文字を、携帯電話やPDA、電子ブック、PCなどのフラットパネル型カラーディスプレイ (*1)に、フォントのデザインをできるだけ崩さずに表示できる高精細文字表示技術を開発いたしました。
開発した技術を用いると、印刷技術で培われた見やすく、読みやすい文字をディスプレイに表示できるため、携帯電話などの小さなディスプレイでも、従来に比べ格段に読み易い文書を表示できます。たとえば、ルビや細かな字形(ハネや点)でもディスプレイに正確に再現できるため、携帯端末やパソコンの用途が広がるものと期待されます。
本技術の詳細は、PAGE2002(会期 : 2002年2月6日〜8日、会場 : サンシャインコンベンションセンターTOKYO、主催 : (社)日本印刷技術協会)にて発表する予定です。
【開発の背景】
携帯電話の爆発的な普及やPDAの普及により、小さい画面の携帯型端末で文字を見る機会が増えています。また、ブロードバンド・インターネットの時代には、情報量の大きい電子コンテンツを配信できるようになり、これまで印刷物として提供されていた書籍、雑誌、新聞を電子データのまま配信するサービスが始まっています。
しかし、印刷物を出力するプリンタや印刷機の解像度は600dpi (*2)以上であるのに対し、ディスプレイの解像度は100dpi程度しかないため、ディスプレイに表示された文字は、文字縁辺部のジャギー (*3)が目立ち、印刷物のようにきれいに表示できませんでした。
これを解決するため、ディスプレイの解像度を上げようとすると、ディスプレイが高価になってしまうといった欠点がありました。そこで、ディスプレイの解像度をあげずに、きれいな文字を画面上に表示できる高精細文字表示技術の開発が望まれていました。
【開発した技術】
今回、文字縁辺部のジャギーを劇的に軽減し、フォントのデザインを維持しながら、きれいな文字表示を行える高精細文字表示技術を開発しました。
この技術は、フラットパネルディスプレイの1表示画素を構成するRGB(赤、緑、青)の表示セルが横方向に並んでいることを利用しており、これまでのディスプレイをそのまま使って高精細な文字を表示することができます。 図1に、本技術を文字画像に適用した例(文字画像の一部分を拡大)を示します。
- 横方向のRGB表示セルを独立に制御
開発した技術では、1ドットを構成するRGBの表示セルをR, G, Bそれぞれ独立に制御することで、見かけ上の横方向の解像度を3倍にしてジャギーを軽減し、文字の"滑らかさ"を実現しています。このとき、文字の一部は、赤や青、緑の色がついてしまいますが、狭小視角における人間の色知覚特性(*4)を利用しているため、黒く見えます。
- 縦方向にも文字画像の輝度を変調
縦と横の文字線幅の太さが同じになるように縦方向にも輝度変調を行うことで、フォントのデザインを損なうことなく、美しい文字を表示できるようにしました。
4ポイントから9ポイントの文字を用いて、従来技術(グレイスケールフォント、サブピクセルレンダリング (*5))と一対比較法による主観評価実験を行った結果、既存の手法に比べ、開発方式のほうが格段に見やすいことを確認しました( 表1、 表2)。
本技術の開発にあたっては、 フォントデータの提供および文字画質の評価について、 印刷業界で使用されているフォントとして評価の高い (株)モリサワ(社長 : 森澤季公生、 本社 : 大阪市)にご協力いただいております。
- 【用語解説または注釈】
-
- *1 : フラットパネルディスプレイ
- 平板型の薄いディスプレイ装置。液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)
が代表的なものです。ここでは、表示器の1表示セルが分離しているディスプレイのこ
とを指し、CRTディスプレイは除きます。
- *2 : dpi(dot per inch)
- 印刷機、プリンタ、スキャナ等で用いる解像度の単位。1インチあたりの画素点数を表します。ディスプレイの場合は、1インチあたりの表示ピクセル数であるppi(pixel per inch)表現を用いることが通例ですが、ここでは、表現を統一するため、dpiを用いています。
- *3: ジャギー
- ジャギーとは、分解能の不足により、文字画像の縁辺部に生じるギザギザのことで、文字画質を劣化させる要因となります。
- *4: 狭小視角における人間の色知覚特性
- 人間が、小さな物を見る際に、対象物を見込む視角が2〜3分以下の時、眼は色を判別できないことが知られています。たとえば、100dpiのディスプレイを30cm離れて観察すると、1画素の観察視角はおよそ3分となり、人間は、1画素の大きさでは明るさだけしか検知できなくなります。
- *5: サブピクセルレンダリング
- フラットパネルディスプレイのRGB表示セルを利用する文字発生方法。従来方式では、色消しを行うためRGB表示セル配列方向にのみフィルタ処理を施します。
- 【商標について】
- 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以 上
- 表1 開発技術とグレイスケールフォントの読みやすさ比較
-
- 表2 開発技術とサブピクセルレンダリングの読みやすさ比較
-
- 図1 開発技術の文字画像への適用結果
- [クリックすると拡大表示されます]
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
|