1996年度入社式社長挨拶

社 長 関澤 義


ネットワークとグローバル時代の

新しい富士通を担うために


皆さん、富士通への入社おめでとうございます。そして皆さんが、富士通グループの一員となったことを心から歓迎いたします。
富士通は昨年創立60周年、人間で言えば還暦を迎えましたが、当社をはじめとするIT産業は、今まさに激動・躍動の時代の中にあります。社内では61年目の今年を、富士通が新しく生まれ変わる再スタートの年と考えています。このような節目の年に入社された皆さんは、「新しい富士通は自分たちが作る」という意気込みをまずは持っていだたきたいと思います。


ネットワークによる変化の真っただ中の社会


さて、皆さんが今日記念すべき第一歩を踏み出す社会は、現在さまざまな変化の真っただ中にあります。これらの変化の引き金となっているのが「ネットワーク化」です。
変化の一つに「マスからパーソナルへ」という流れがあります。例えば、製造業では大量生産から多様なニーズに合わせた多品種少量生産へ、運輸業では大量輸送から小口の宅配便へ、また、小売業でも業績の好調なコンビニエンスストアでは地域や時間帯によるお客様の層に合わせて品揃えをするなど、きめ細かいマーケティングを行っています。それらを可能にしている背景には、多数の商品、配送する荷物、あるいは膨大なお客様の購買データなどを把握、管理できる高度な情報ネットワークがあるのです。


ネットワークをいかに活用し、何を創造できるかが勝負


このように「ネットワーク」をキーに変化する社会、お客様に対し、時代を先取りする 商品やシステムを開発し、提案・提供していくのが当社の使命ですが、一方でネットワーク化は、私たちの仕事のあり方、取り組み方にも変化をもたらしています。

一つは、ネットワークを通じて情報を入手することが容易になった分、その情報をもとに何を創造できるかが勝負になってきたということです。インターネットにより世界中からさまざまな情報が得られるほか、富士通社内のネットワークでも、過去に成功した商談の事例やシステム構築のノウハウなどの知識情報をデータベースとして、従業員が共有できるようになっています。これからの仕事は、これらの情報をいかに活用して新しいことを創造できるかで評価されることになります。新入社員の皆さんにとって、先輩の知識やノウハウをネットワークを通じて容易に得られることは大きなプラスと言えるでしょう。皆さんはこれらのネットワークを積極的に活用して効率的に情報を収集し、それを土台にフレッシュな感覚で、今までの常識・慣行にとらわれず、新しいことを創造していただきたいと思います。このためには、皆さんがパソコンをはじめとする情報技術を身につけることが必要です。


大競争時代−−−常にグローバルな視点を持ち、世界の仲間の先頭に


二つ目は、インターネットに代表される情報化の進展により、企業はビジネスに必要な情報を世界中から集め、お客様は世界中から最良のものを選ぶ、メガ・コンペティション、つまり大競争の時代に入ったということです。今後、富士通が提供する製品、サービスはすべて国内のライバル企業に比較して優れているという基準では十分でありません。世界にはもっと早いスピードで成長している企業がいくらでもあります。常に世界の市場で通用するという視点を持たなければなりません。
ところが急激な円高により、現在わが国のコスト競争力は大きく低下しています。少し厳しい例ですが、各国の富士通グループに入社する新入社員の賃金を比較してみても、皆さんの賃金は、アメリカの会社の新入社員の 1.2倍強、中国、インドの新入社員の10倍以上となってしまいます。私たちはこの差を、高い独創性、生産性によって乗り越えて行かなければなりません。これから皆さんは、営業、SE、研究開発、経理・人事などさまざまな職場で活躍されますが、どの部門であっても常にグローバルな視点を忘れずに、「世界の仲間たちの先頭に立つ」という気持ちを持っていただきたいと思います。

このようなビジネスのグローバル化とネットワークによる情報収集・発信の必要性の高まりから、社内では全員で英語力を高めようという研修を始めました。現在、インターネットでは約90%の情報が英語で発信されています。昨年入社した先輩たちも、今最も必要だと思うスキルとして、英語力を挙げています。これからの富士通を担っていく皆さんにとって、もはや英語は避けて通れません。仕事において、自分のやりたい夢を実現するために必要な道具と考えて、積極的に取り組んでください。

以上、新しい富士通を担う皆さんに対する期待を述べましたが、何といってもそれを支えるのは、皆さんの健康と意欲です。新しい環境に早く慣れ、明るくはつらつと新人らしく活躍されることを期待します。


入社式の模様