
2010年1月、東京証券取引所(以下、東証)において、最先端の次世代株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」が稼働しました。ハードウェアからアプリケーションまで全て富士通製で構築し、スピードと信頼性を両立させるために威信をかけて富士通が取り組んだ世界最高水準システムの開発の裏側をご紹介します。
新売買システムの条件として注文応答時間が10ミリ秒以下という要求が東証から提示され、富士通は超高速ミドルウェア「Primesoft Server(プライムソフト サーバ)」を新規開発しシステム構築を行うことを提案しました。本システムの核となる「Primesoft Server」の特徴は、データを全てメモリ上に展開して処理を行うことです。途中でディスクアクセスが発生しないため、高速なデータ処理が可能となりますが、一方でデータはメモリ上にしか存在しないため、途中でエラーが起きた際のデータ保証の仕組みが必要となります。そこで、データを自動的に3重化してリスクヘッジする機能をミドルウェアで実現しました。
東証は過去のシステム障害時の経験を踏まえ、発注者としての責任を果たすべく自ら要件定義(注1)とテストを行うことで品質を確保しました。それは4,000枚にもおよぶ要件定義書と外部仕様書、6万ケースもの受け入れテストと大変厳しいものでした。富士通も開発の工程を全て東証が合意したプロセスで実施し、それらのマネジメントもこれまでのやり方を大きく変革することにより東証の要求に応えました。
新取引システムの構築にあたっては、厳しい性能要求に応えるために、ミドルウェアのみならずアプリケーションプログラムにおいても既存のものを流用せずにゼロから作る方針を立てました。さらに、富士通のメンバーの7~8割は従来の東証のシステムに関わったことがなく、複雑なシステムの開発を不安視する声もありました。そのため、特定のプロジェクトのためとしては社内でも初めて、リスク管理や開発の進捗状況を客観的にチェックするための第三者組織を立ち上げました。さらには、パートナーも含め1,000人が関わる大規模プロジェクトだったため、コーディング規約などがきちんと守られているか、外部の機関にチェックを委託するなどして地道な品質向上活動を行いました。ミドルウェアとアプリケーションを同時にゼロから作る大規模開発は20年に1度くらいのこと。大変きつい開発となることが想定されましたが、プロジェクトメンバーのシステムを動かしたいという強い気持ちが開発を完遂する原動力となりました。また、担当部門の新人の多くが本プロジェクトへの配属を希望するなど、構成メンバーのモチベーションを高く維持できたことも成功要因の一つです。

CUSTOMER'S VOICE
東証の命運をかけたプロジェクト ~富士通の成果は期待以上で150点~
4年前のシステム障害で失った信頼を回復するために本システムの構築を決定しました。海外ベンダーを含め入札を行いましたが、高速性と信頼性を両立する世界一の売買システムを作ることを念頭に置いた富士通の提案が群を抜いていました。設計やテストの段階ではハラハラさせられることもありましたが、結果的には目標の注文応答時間10ミリ秒をはるかに上回る2ミリ秒を実現し、本稼働時もトラブルがゼロ件であったことを考慮すると、富士通の成果は150点です。